2009年07月03日

地元の国公立大学医学部か、あるいは、国立有力伝統大学の理系学部か

全く、答えが出ない問題というか、そもそも、比較して悩むことがおかしいのかもしれません。
なぜなら、大学進学は、受験生本人の学習意欲と実力で決めて行くべきことだから。
本人が、将来、医師になりたいのなら、医学部に進むしかないし、そうではなくて、理学や工学を学びたいのであれば、自分が専攻したい研究分野が盛んな大学を選ぶしかない。

地域社会への貢献という点でみても、どちらも、その地域社会に貢献することができると思います。
もちろん、医師というプロフェッションは、その社会的役割からも、地域社会への貢献度は見えやすいですよね。医学研究もしかり。
でも、有力伝統校に進んで、理学や工学の領域での最先端研究に携わることはもちろん、研究以外でも、たとえば、高級官僚になって政策を立案したり実施したり、あるいは、大手企業で大きなプロジェクトを推進したりというのも、十分、地域社会(というか、国民や人類)への貢献となりますよね。
映画「プライベートライアン」にこんなセリフがあります。
「俺たちが命がけで助けに行くライアンって野郎は、それだけの価値のある奴なんだろうな。切れない電球を発明するとか」 研究は、大変、意味のある仕事です。

だから、どっちでもいいと私は思います。

でも、地方の進学校と呼ばれる高校の進路指導の先生たちには、とても、悩ましい問題のようです。

「医師不足」のおり、地域社会で活躍する医師を増やすべく、地元の医学部への進学を勧めるべきか。でも、その成績なら、有力な伝統校の理系学部を狙うことも不可能ではない。どっちがいい?
本人が決めるべきなのだが。アドバイスはしなければならないのかな。

いろいろな高校からの卒業生を受け入れている側からみていると、高校によって、進路指導のウエイトが違っているように感じられるのです。
「とにかく医学部」という学校もあれば、「いやいや、有力伝統校へ」という進路指導をしている学校もあるようです。
本人の希望を第一に考えてもらえたらなあって、思っています。だって、本人の人生だもの。後悔はさせたくないですよね。

医学生を受け入れている側から言わせてもらえば、
「医師になる意欲や準備が十分ではない生徒を、無理矢理、医学部に進学させるのはやめてください」

医学自体、理系の学問とされていますが、なかなか、純粋数学や理論物理学のような学問大系、成り立ちではないこともあり、学問自体に学習の目標を置くことが簡単ではないからです。
いきなり、そのような学問である医学を学ぶと、いわゆる科学的思考や態度というものを、医学学習を通して身につけることが容易ではありません。今の高校生たちの中には、受験対策勉強はしていても、科学的な態度や論理的な思考法などをしっかりと訓練してもらっていないケースがあるからです。でも、そういう生徒でも、今の大学受験の方法では、医学部に入学することができる、というか、逆に、有利だったりすることがあるようです。

「困っている患者さんたちを助けてあげたいから、社会に役立ちたいから、だから、医学を学ぶ」というのが、常識的なところなのかもしれませんが、それでは、医学という学問を学ぶ目的意識としては、学問外にその目標があることから、なかなか、若い学生たちには難しい面があると思います。

また、患者さんという、生身の人間を対象とした仕事でもあり、いろいろ、悩ましい問題がたくさんあったりするからです。

たぶん、こういうことから、アメリカの多くの医学校では、高校卒業後すぐに入学できないようになっていて、カレッジを卒業した学士さんが入学するようにしているのかもしれません。

これは、入学後、本人の苦しみとなる可能性があり、我々も、そのような学生へのサポートをやっていますが、なかなか、根本的な解決が難しい。

「せっかく、医学部に合格したのに、なぜ、途中で辞めるの?」
という疑問に、しっかりと答える準備をさせてあげる必要があるから。

なかなか大変な境遇にいる医学生も少なくありません。本当に、みんな、よくがんばっていると思いますし、また、気の毒だなと、感じさせられる学生もいます。

nakaikeiji at 08:32コメント(7)トラックバック(0) この記事をクリップ!
医学部入試 | 医療崩壊

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コメント一覧

1. Posted by shin   2009年07月04日 12:24
医師不足だから、医師を目指す生徒を増やそうとする教師たちは変だと思います。だって、医学科の定員はそれに伴って増えるわけでもない。医学科で定員割れなんて聞かないですし、わざわざ、「医師不足やから、医者になろう!」なんて言わなくても、医師を目指す人は十分にいますよね。こうやって、医学科の偏差値ばかり上がってしまって、ぷーさん先生の言うような、退学組が増えてるんだと思います。
暑いからと言って、クーラーをがんがんにかける人が、実は地球の温度を上げてて、もっと暑く感じることに気付かないのと似てますよね^^
2. Posted by shin   2009年07月05日 21:43
だから、高校の教員が、もっと責任感を持たないといけないと思います。そのためにはどうすればいいのかなぁ…。

逆に、ぷーさん先生がよく言うように、大学に入りやすく、進級しにくく、その上flexibleに、なれば、事態は理想に近づきますね。押してダメなら引いてみよ。って感じ☆
こうなれば、高校の教員のレベルは下がるか?
3. Posted by お邪魔します。   2009年07月06日 18:07
高校の先生の責任でも、親の責任でもなく、進路の選択は本人の責任ではないでしょうか。

当たり前ですが、高校の先生は医学部にはいっていないわけですし、医者を職業としたことはありません、たとえ、親が医者でも何十年か前の医学部を知っているだけです。医学部はそんなに忙しくないと親から言われたから来たけど、全然話が違ったと言っている学生もいます。

オープンキャンパスや体験入学を活用して、会った教員に質問しまくってください。自分が勉強したい学問やつきたい職業を、徹底的に納得できるまで調べてから受験してください。

医学部進学に限りませんが。
4. Posted by shin   2009年07月06日 22:51
これは高校生に限らずですが、日本では、長いものには巻かれろ。が常識です。中学、高校では特に。少しでも背けば、出しゃばりだの、KYだのと、はみ出されます。恥の文化。ですか。だから、先生の言うことは影響力大です☆長いものなのです。勉強熱心な、真面目な子ほど、素直な子ほど、影響を受けると思います。だから、高校生に、進路の選択は自分の責任だと言うのは厳しいと思います〜
その、恥の文化のせいで、質問しまくる人はとっても少ない。シャイなんです。出る杭はよく打たれる。出すぎれば、打たれないかな?♪出すぎた杭はなかなか見ないです。
徹底的に調べて、納得するには、時間が足りない…いや、いくらあっても納得できないと思います。
5. Posted by ぷーさん   2009年07月08日 19:54
入試の面接を担当していると、なぜ、医学部をめざしたの、という(陳腐な 笑)質問に対しては、みんなきちんと「準備」していますね。

この2つが多い。

1つめ:家族や自分自身の疾病体験を語る

2つめ:子供のころから、お世話になったという、かかりつけのお医者さんの話を語る

もちろん、いずれも、虚偽ではないことは信じています。本当のことと思いますので、それをとやかく言うつもりはありません。

面接で、こういうことを言う、受験生には、会ったことがありません。

「自分の学力だけで確実に、失業の心配もなく、また、収入も高い職業につけるから」

ノーマルな面接では、測定できることに限界があるように思います。
だから、全国の大学も、いろいろ、工夫をしているのでしょう。
6. Posted by 学生   2009年07月08日 21:16
医学部の志望理由として、
>「自分の学力だけで確実に、失業の心配もなく、また、収入も高い職業につけるから」
というのは悪いことなんでしょうか?
ものすごく全うな理由だと思うのですが…
実際言ったらマイナス評価になるものなのですか?
面接の話の度にいつも気になります。
7. Posted by ぷーさん   2009年07月09日 21:36
学生 さん、コメントをありがとうございました。

私は、正直に語る、というのは嫌いではありません。でも、私個人の、勝手な価値判断で、決めてはいけないですよね。私企業のワンマン社長ならまだしも。国立大学法人での入試ですから。

医師という仕事が、「自分の学力だけで確実に、失業の心配もなく、また、収入も高い職業につけるから」

受験者がこのように発言したら、患者さんや納税者の方々は、どのように感じるのか、ということを考えておかねばならないと思います。
だから、入試面接は、難しいことだなあって、感じるのです。

それを、きちんと客観的にできるようにと思っています。

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