2009年06月24日

「医学科の学生は、なぜ、不真面目なのでしょうか?」

この春、うちの大学を受験してくれたのに、涙を飲んだ方が、代わりに入学した1年生たちの大学の講義室での様子を見たら、愕然とするでしょうか?あるいは、いやあ、私も合格していたら同じだったでしょう、と、笑ってくれるでしょうか。

先日、別の学部の学生と勉強会で出会ったとき、こんなことを言っていました。

「先生、医学科の学生は、どうして、不真面目なのですか?
私たちより、ずっと、偏差値が高いし、医師という仕事を目指しているのに、態度がひどい方がいます。講義室では、ベラベラと私語をし、携帯やゲーム機を触っている姿をみると、げんなりです」

はっきり言って、私は、恥ずかしかった。

私も、共通教育(教養)の講義を1つ、半期で開講しているのですが、医学の基礎知識を講義するものです。
その講義には、医学部だけでなくて、いろんな学部の方が受講してくれています。毎年、受講者が増えて、今年は200名近くになりました。ありがたいことです。
本当は、医学科以外の学生向けに開講したのですが、自分の空いている曜日で講義を設定したら、医学科の指定科目がない時間帯だったので、たくさんの医学科の学生が受講してくれています。それは、ありがたいというか、うれしいのですが、医学科の学生が、私の講義を聴いてくれるのなら、教室の一番前に陣取って、居眠りなどもせずに、楽しそうに聞いてくれたらって、思うのですが、それは、全くの幻想。私の講義は、一番大きな階段教室で開講となっていますが、その教室の一番後ろの列を陣取っているのが医学科1年生の学生たちで、そこに座っていることだけでも、わたしにはげんなりですが、その上に、私語の嵐。

「おいおい、静かに」と、普通に呼びかけたって、全くそしらぬ顔で、騒いでいる。
「おいおい、一番後ろのみなさん!」と大声を上げ始めると、最後の列に座っている数人が気付いて、首をすくめ始めたが、それでも、まだ、気付かない学生が大声で話している。数秒間。
「静かにしろ、言ったら、静かにしないか!」と、大声を出さねばならない。小学生か、お前らは。最近の小学生のほうがもっと成熟しているかもしれないぞ。(だから、いけないのかもしれないね。笑)

人文学部や工学部などの他学部の学生のほうが、私の講義を聴きたいと前の方に座ってくれている。医学科の学生たちとは、始めから、学習意欲が違うのです。医学科の学生は、「とりあえず、この講義はとってけ」「あとで、役に立つこともあるだろう」程度の受講理由なのでしょう。

「医学科の諸君。みなさんの態度をみて、他学部の学生が軽蔑していることを知っているか?」

「もし、この講義を聴いて、後から役に立つだろうと思っているなら、大間違いで、みなさんが学ばなければならない医学知識の量は、私の講義の数倍ある。役に立つことはないから、講義を聴きにくる必要はない。」
「それより、テニスでも、遊びでも、なんでもしたいことをしたらいいじゃないか。無理に教室に座る必要はないだろう。恥ずかしい。」

この春の受験で涙を飲んだ方が、こんなことを聞いたら、この様子を見たら、どう思うのでしょう。
このブログでも紹介しましたが、だいぶ前に、入学時のセンター試験の成績と、6年生の卒業時の成績の相関をみたことがありますが、全くの無相関でした。相関係数は、マイナスだったりしました。まさかの逆相関?
これは、医師としての準備や目的意識がしっかりしてないのに、ペーパーテストの成績がよいから医学部医学科を受験し合格した、という、学生がいるからなのです。実際の医学の内容や、医師というプロフェッションの中身を知らないままに、医学部医学科を受験し、みごと、合格です。

医学部医学科の受験なんて、本当に大変なことだろうと思いますから、それに見事に合格した彼らが凄いなあと単純に思っていますが、しかし。

つまり、医学部の入学試験でのペーパーテストなんて、実際のところ、何を評価しているのか、よくわからない状態になっているのかもしれないのです。合格になった学生と、不合格になった学生。その結果には大変な違いがありますが、将来の医師としての資質とは無関係?そんな。
だから、不合格になった受験生の中に、医学の学習にまじめに取り組む方がいたのではないかと、このように思ってしまうのです。少なくとも、合格した学生は、不合格になった受験生よりも、医学を学ぶ意欲が高いと思うのですがね。違うのですね。

来年、もし、この講義を開講するなら、医学科の学生は規制しようと決めました。
というのは、彼らとは、また、のちほどの専門教育で、彼らが嫌というほど、私と関わりあうことになるから。まったく、もったいないことはありません。まじめな医学生たちには悪いのですがね。

手ぐすね引いて、3年生に進級してくるのを楽しみに待つことにします。
そうしないと、受講してくれている、他学部の学生たちにも悪いからね。

nakaikeiji at 21:09コメント(10)トラックバック(0) この記事をクリップ!
学生気質・学習意欲 | 医学部入試

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コメント一覧

1. Posted by mikan   2009年06月25日 23:53
あまりガミガミ言うのも虚しいですし、管理っぽくなるのもどうかと思いますし…。難しい問題です。そもそも教員側で気にすることではないはずなのですが。本人や親御さんに期待するのは間違いなのでしょうか。
2. Posted by 一学生   2009年06月26日 00:10
「もし、この講義を聴いて、後から役に立つだろうと思っているなら、大間違いで、みなさんが学ばなければならない医学知識の量は、私の講義の数倍ある。役に立つことはないから、講義を聴きにくる必要はない。」

とのコメントは私には理解しがたいものです。
役に立たないと言われる講義を聴かずに家でガイトンを読むことを推奨されているのでしょうか?

私自身は個人勉強でガイトンを理解できないから、授業を受けます。どんな授業でも自分の理解の取っ掛かりになると思っています。

あとで役に立つこともあるだろうという受講態度に問題があるとされる理由をもう少し詳しくお聞かせください。
3. Posted by ぷーさん   2009年06月26日 08:34
mikan さん いつも、コメントをありがとうございます。
おっしゃるとおり、大学の教員は、大人の学生を相手にしているのだから、学問だけを追究し、教授しておればよい、というのは、古来からの伝統的な形だったかと思います。
最近では、国立大学でも、学生の成績を親御さんのもとにも送付しているところが増えているそうです。時代は変わったのでしょうか?未成熟な(適切に成熟する機会が与えられてこなかった)学生が多いからでしょうか?

一学生 さん、コメントをありがとうございました。文字によるコミュニケーションのもどかしさ、説明不足ですみません。
私が教養のところで開講している講義は、選択科目であり、必修科目ではありません。だから、「このことを学びたいから」選択する学生が多いのですが、なぜか、医学科の学生の中にそうでない学生がいるのです。そこをなげいています。1年生だから、まだ、医学そのものを無理矢理に学ぶ必要はないとも言えるし。
学問を学ぶ姿勢としては、「あとで役に立つかもしれないから」というのよりも「このことを学び、理解したいから」というのがより適切と言われており、その点では、医学を学ぶ医学生というのは、学習の意欲を引き出すのが難しい場合もあるかもしれません。
ご質問の点については、長くなりそうなので、また、ページを改めて、返答します。
4. Posted by 匿名希望   2009年07月01日 15:32
医学部学生の態度の悪さはうちでも問題になっています。
世間の医者嫌い、医師バッシングの原因にならないか・・・とても心配です。
5. Posted by 某   2009年07月04日 00:25
1年生のうちに臨床の授業を聞いても
生理学や病理学などの基本的な知識がないため
あまり身につかない気がしますね

知識とは単体ではなく、何かにかこつけて
増やしていくものと考えています

ただ、やはり1年生は医学部に何かを
期待しているのではないでしょうか

せっかく入ったのに何の関係もない
教養ばかりで危機感を抱いているのかもしれません
6. Posted by ぷーさん   2009年07月07日 20:15
某 さん、コメントをありがとうございました。

1年生が「危機感」をもっているのならいいかもしれませんが、その逆かも、って思っています。

そもそも、医学生が医学を学ぶ動機は、学問を学ぶ姿勢としてはやや不純かもしれません。
教育学の研究では、学問を学ぶ姿勢として一番よいとされているのは、「わからないことを知りたいから」「わかることが興味深いから」とされています。
ところが、多くの医学生が医学を学ぶ目的は、どうしても、「あとで役に立つから」ということが優先されてしまいがちです。それは、学問を追究する姿勢としてはやや弱いのです。
医師になるために医学部にすすむ、というのが世界共通と思いますので、日本だけのことではないと思います。だから、アメリカでは、カレッジを卒業した学士さんだけをメディカルスクールに入学させているのかもしれません。
7. Posted by KIM   2009年09月08日 14:57
まあ1年生の気持ちも分かりますけどね・・・。
医学部に入ったと思ったら教養・・・しかも内容は・・・地方大なんかだとしょうもない講義ばっかり。

ただ、我々の頃は空気を読まない学生はいなかったのでいつも静かでしたけどね。出席もしないけど。

それでもやはり講義に真面目に出ないくせに試験はいつも上位の医学部生たちは煙たがられてました。
8. Posted by ぷーさん   2009年09月15日 21:28
KIMさん、コメントをありがとうございました。

数年前から気付いたのですが、医学生や、あるいは、我々医師も、医学というか、学問というものをやや誤解しているきらいがあるように思います。
学問を学ぶ理由として、「あとで役に立つから」とか「あとで苦労しないように」などというのは、いささか、実利的に過ぎるのではないかと思っています。
学問を学ぶことの目的は、やっぱり、そのことを学ぶこと、理解することが興味深いから、面白いから、でありたいですよね。
でも、我々、医師や教員も、医学生たちに、「今、このことを教えておけば(学んでおけば)あとで役に立つから」などとサービス精神を発揮している。自然にね。

1年生たちが、教養の科目をまじめに履修しないのは、医学部に流れる、そような「隠れたカリキュラム」の存在があるからかも、って思っています。
9. Posted by 6年生   2009年10月31日 02:10
教養科目と聞いて昔のことを思い出します。

原因のひとつに、授業内容のレベルにあると思います。

すこし行き過ぎた表現になってしまいますが、医学部の人はやはり頭のいい人が多く、数学科の学生より数学ができて、英語学科の学生より英語ができる、というのは毎度のことなんですよね・・・。教養科目はそういう一般学部の学生を対象とした内容になっているため、医学生にとっては物足りないもの、あとでちょっと勉強すればできてしまうもの、つまらないものというような感じになってしまいます。

まあ、だからといって授業態度が悪いのは社会人としてどうなのかと思ってしまいますが。(笑)
10. Posted by ぷーさん   2009年11月01日 20:49
6年生 さん、たくさんのコメントをありがとうございました。

また、ゆっくりとご返事を書きたいと思いますが、このコメントだけは、すぐに、返事させてください。

よく、医学生が教養課程をまじめに履修しない理由に、「授業内容がレベルが低いから」というのがありますが、すべての科目にはあてはまらないと思います。

教養科目には、レベルの高い科目もあるのです。先生が有名であっても、有名でなくても。
ただ、それを学生が見抜けないだけかも。

全て、レベルが高い、と自信をもって言えないのがつらいのですが。
私が開講している科目もレベルが低いのかもしれませんが、医学科生は5月を過ぎると、受講態度が不真面目になる学生が出てきます。毎年、残念に思っています。

このことについては、医学生の学習意欲についての、ある仮説を持っています。また、紹介します。

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