いろんな患者さんとの出会いを楽しめるようになってきました。
これも、「年の功」かもしれません。若いときは、どんな患者さんが来るかわからない、外来や救急は、本当に苦手でした。

患者さんとコミュニケーションがとれたと実感できたときは本当にうれしいし、そのときの患者さんの様子をみると、こちらが癒されたような気持ちになります。「医師が患者さんを癒しているだけではなく、医師も癒されている」と、ある医師が書いていました。

でも、ときどき、やっぱり、患者さんとのコミュニーションは難しい、と、思わされることがあります。

先日、ある病院で仕事をしていたとき、小球性貧血の患者さんが婦人科から紹介されてきました。40歳後半の女性です。ヘモグロビンは7.8g/dlとしっかりとした貧血でした。
カルテをみますと、数年前にも、同様の状況で内科を受診されていて、鉄欠乏性貧血と診断され、半年ほど通院して鉄剤を服用し、正常値に改善していました。そのあと、通院をやめてしまったみたいです。婦人科のカルテをみますと、子宮筋腫があるようですが、手術の絶対適応ではないと、経過観察の方針のようです。
貧血の原因は、おそらく、子宮筋腫とそれによる月経での鉄喪失による鉄欠乏性貧血と考えました。(もちろん、消化管出血の可能性も捨ててはいけませんよ)
患者さんに話します。
「どうも、子宮筋腫のための鉄欠乏性貧血のようですね。月経は大変ですか?」
「そうですね。2日目からはしんどくなって仕事を休むこともあります。2週間ぐらい続くこともあります」
「それは、大変ですね。婦人科の先生は、どのようにおっしゃっておられますか?」
「筋腫はそれほど大きくないし、貧血は、薬をのめば改善できそうだから、そのまま様子を見ていこうと言われています。私も、手術は嫌ですし。」
「そうですね。わかります。」と、笑顔をみせて、返事をしました。患者さんが、医師の前で、自分の考えを述べるのはかなりの勇気がいることを知っています。なので、自分のお考えをのべられたときには、できるだけ、支持的な態度を示すべきと考えています。「お考えを教えて下さり、ありがとうございます」という気持ちです。
すると、患者さんも打ち解けたようになり、こんなことを言って下さいました。
「先生、婦人科の先生は、月経が終わるまで、て、言うのですが、いつ終わるのでしょう?」
ムム。これは困った。今までの経験でいえば、30歳代で閉経を迎えた方もいますし、逆に60歳代でも、月経がある方も知っています。本当に、個人差がありますよね。
「婦人科の先生は、なんとおっしゃっておられました?」
「よくわからないって、おっしゃるのですが、私は、早く終わって欲しいって思います」
ここで、私は、なんとお答えすべきでしょうか。悩みました。

選択肢1 「そうですね。こんな面倒なことは、早く終わる方がいいですよね」
選択肢2 「そうおっしゃらずに、閉経が早く来ない方がいいと思いますよ」

選択肢1は、男性の医師が言うのは危険です。以前、女性の婦人科医師で、子宮癌で子宮全摘を戸惑う患者さんに、「こんな面倒なものは、取ってしまいましょう。楽ですよ」って、言う医師がいると聞いたことがありますが、これは、絶対にできないと、私は思っています。特に、男性医師が言うべきことではないと思います。女性医師であっても許されないケースもあるでしょうね。

選択肢2は、これも、他人事みたいな距離感を感じる対応かもしれません。難しいですね。

私は、「そんなに、月経が大変なのですね。お困りだということなのですね」と、受けておきました。婦人科に相談してみようと、思いながら。
でも、患者さんは、さらに続けます。「来月にでも閉経してくれたらなら」本当にお困りなのかもしれませんね。
私は、「そういえば、お母様は、閉経は何歳でしたか?よく、親子で相似すると言われていますよ」と、テーマを変えました。すると、
「先生、母は55歳だったんです。まだ、あと、10年近くあります。ふう。」と、大きなためいき。しまった。
患者さんとの会話は難しいなあって、思いました。

同様の問題は、高齢の男性の排尿障害についての会話でもみられることがあります。
若い男性医師に、「排尿に時間がかかる」と、言いたくない高齢の男性の方も少なくないように感じています。もちろん、女性にも言いたくないでしょうね。