2007年07月17日

医師法第21条問題と憲法38条

医師のあり方と法律については、よく勉強しているつもりでしたが、とても大事な問題点を知らずにいました。

医師法第21条
「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」

憲法38条1項(自己負罪拒否の特権。黙秘権)
「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」

なぜ、この2つの法の規定が問題になるのか。

医師法第21条の規定は、そもそもは、自然死ではないと思われる死体(異状死体と呼ぶ *異死体ではないことに注意ね 医師がそのように認識することが前提だが)、つまり、犯罪が行われたのではないかと疑う事態があれば、警察に速やかに届け出ることを求めているものです。
しかし、最近の医療の高度化と、患者権利の向上は、この「異状死体」の範囲を不明確にしてきました。この条文そのものが社会問題化してきています。

「医療に関連した死のうち、予想外の死である場合を含む」のか?

ということが大きな問題になってきたのです。その背景には、医療事故および医療不信の問題があります。

実際、自らの医療ミスが関係した患者の死を、速やかに所轄警察署に届けなかったとして、警察に逮捕され、起訴されている医師がいます。
(その件では、さまざまなことが問題とされています。たとえば、その患者の死を、その医師が異状死と認識していなかったではないか、また、そもそも、医療ミスによる死を異状死として、その担当医が警察に届けなければならないのか、という点も問題になっています。)

しかし、憲法には、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」という規定があります。自分が不法行為を働いたと認識しているなら、それを申告することを強制されないというものです。なので、自ら申告したら、自首として、罰を軽減することを考慮する事情として扱われるのです。自首しなかったことだけをとらえて、それを罪に問われることはありません。

死体をみたとき、それが、異状死体かどうか、判断するのは医師の役割だと思われます。
すれば、自らのミスによる患者の死が異状死であると、その医師が認識しているなら、それを届け出なかったことが、医師法の規定にしたがうと不法行為となると責任を問われるのは、その上の憲法違反かもしれないわけです。

でも、医療ミスによる死を社会に隠蔽する事態は避けなければならないです。

これは、医師法等、関連する法律の改正なり、新しい法律を立法して整合性をとるようにするなり、なんらかの立法的な措置が必要と、私は考えます。
少なくとも、「異状死体」の範囲を明確に規定してもらいたい。あるいは、警察に届けるのとは違う方法でもよいかもしれない。

とにかく、今のままでは、医師という重要な責務を果たすことが、危なくてできない。

nakaikeiji at 18:46コメント(3)トラックバック(0) この記事をクリップ!
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コメント一覧

1. Posted by 同級生A   2007年07月18日 22:06
とある法律家の講演で、「日本では、人の体を傷つければ傷害罪、しかし医療行為の場合は問われない、という法律の構造になっている。これは世界的には珍しい。持っていき方によっては病院で行われたことが傷害罪に問われることがありうる」と聞いて背筋が寒くなったのですが、これは本当なのでしょうか??
2. Posted by ぷーさん   2007年07月24日 08:43
いつも、コメントをありがとうございます。
医療行為のための契約は、本来、「準委任契約」とされます。つまり、自分の怪我や病気を治すために、自分が本来すべきことを、他者の専門家に任せているという形態だそうです。
そういう観点からいえば、「傷害罪の適応除外」である、という法理論になるのでしょうか。
3. Posted by ぷーさん   2007年10月17日 22:33
自己トラバですが、その後の検討経過がニュースになっていました。

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